I[#「ヱズヰオ」に二重傍線]の山に登るべし。先づ今宵は大路《トレド》まで出でゝ、面白く時を過さん。世の中は驅足《かけあし》して行く如し。而して人々のおのが荷を負ひたり。鉛の重さなるもあり。翫具《おもちや》と一般なるもあり。友は斯く語りつゝ我を促し立てゝ出で行かんとせり。嗚呼、我にも猶此の如く慰め呉るゝ友あるこそ嬉しけれ。我は默して帽を戴き、友の後に跟《つ》きて出でぬ。
好機會
戸を出づれば小屋掛《こやがけ》の小劇場より賑かなる音樂の聲聞ゆ。われ等二人は群集の間に立ちてその劇場の状《さま》を看たり。夫婦と覺しき男女《なんによ》、表《おもて》をのみ飾りたる衣を纏《まと》ひて板敷の上に立ちたるが、客を喚《よ》ぶことの忙しさに、聲は全く嗄《か》れたり。色蒼ざめたる一童子「ピエロオ」(滑稽役)の服を着けて、悲しげに「ヰオリノ」彈けば、姉妹なるべし、少女《をとめ》二人のこれを繞《めぐ》りて踊るを見る。哀なるかな此人々。その運命のはかなきこと我と同じきなるべし。我は大息《ためいき》を抑へて友の肩に倚《よ》りたり。友は慰めて云ふやう。物思《ものもひ》も好き程にせよ。暫くこの邊《あたり》を
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