ケ母の慈悲は廣大なれば、縱《たと》ひ一たび我を棄て給ふとも、いかでか我懺悔を聞き給はざることあらん。われは空想人物にて、汝等と同じからず。世間に立ち交《まじ》るとも、何の益かあるべき。若《し》かじ、今の機到り縁熟せるを幸として、平和を寺院の中に求めんには。友。おろかなり、アントニオ[#「アントニオ」に傍線]。否運《ひうん》に遭《あ》ひて志を屈せずしてこそ人たる甲斐はあれ。汝の氣力あり技倆あるを、傲慢なる羅馬の貴人《あてびと》に見せよ、世間に見せよ。詩人は賤《いや》しき業《わざ》にあらず。汝は才あり學あればこそ、詩人とならんとは思ひ立ちしなれ。汝が前途は多望なり。されどわれおもふに、わが斯く辭《ことば》を費すはいたづら事にはあらずや。汝が僧とならんといふは、けふの黄昏《たそがれ》の暗黒なる思案にて、あすは旭日の光に觸れて泡沫のごとく消え去るべきものにはあらずや。兎まれ角まれ、汝が病をばわが手ぬかりにて長じたりと覺《おぼ》し、汝は獨り籠り居て蟲をおこしたるならん。あすは車一輛|倩《こ》ひて、エルコラノ[#「エルコラノ」に二重傍線]、ポムペイ[#「ポムペイ」に二重傍線]に往き、それよりヱズヰ
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