「の人と同じく我を見放し給ふかと疑ひおもへり。
 フエデリゴ[#「フエデリゴ」に傍線]はこゝに來ぬ。進みて我手を握りて云ふやう。病めるか、アントニオ[#「アントニオ」に傍線]。獨り物思ふは惡しき事なり。汝はアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]を失ひて不幸なりといへど、我は汝のアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]を得て幸なるべかりしや否やを知らず。我經歴に徴するに、大抵わが遭逢せし所は、後に顧みるにわが最も宜《よろ》しき所なりし也。然れども運命の人を引き※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]すは、間※[#二の字点、1−2−22]|頗《すこぶ》る手荒きものにて、人はこれを痛苦とし不幸とするなりといふ。我は詞なくて、卓上の書状を指し、友のこれを讀む間、これに背《そむ》きて涙を拂ひつ。友は我肩を撫でゝ、泣くが好し、泣かば心落着くべしと云へり。暫しありて友は我に、此書状を見たる後、既に思ひ定むる所ありやと問ひたり。此時われは忽ち思ひ付くよしありて、友に向ひて語り出でぬ。聞け吾友、われは僧とならんとす。我は幼きより聖母《マドンナ》に仕へたるが、今思へば淺からぬ縁《えにし》ありしならん。
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