ト、おん身の車には既に幾位《いくたり》の客人をか得給ひしと問へば、隅ごとに眞心《まごころ》一つなれば、四人は早く備りたり、されど二輪車の中は未《まだ》一人のみなり。ナポリ[#「ナポリ」に二重傍線]へと志し給はゞ、明後日は旭日《あさひ》のまだサンテルモ[#「サンテルモ」に二重傍線]城(ナポリ[#「ナポリ」に二重傍線]府を横斷する丘陵あり、其|巓《いたゞき》の城を「カステル、サンテルモ」といふ)に刺さぬ間に送り屆け參らすべしと答ふ。爲換《かはせ》ありて現金なき我がためには、此勸めのいと嬉しく、談合は忽ちに纏まりぬ。(原註。伊太利の旅を知らぬ人のために註すべし。彼國の車主《エツツリノ》は例として前金を受けず、途中の旅籠《はたご》一切をまかなひくれたる上、小使錢さへ客に交付《わた》し、安着の後決算するなり。)
車主は客人も零錢《こぜに》の御用あるべければとて、五「パオリ」の銀貨一枚|撮《つま》み出して我に渡しつ。われ。さらば食卓の好き座席と臥床《ふしど》とを頼むなり。明日は滯《とゞこほり》なく車を出してよ。車主。勿論にこそ候へ。聖《サン》アントニオ[#「アントニオ」に傍線]と我馬との思召だに
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