ュるはずば、正三時には出で立つべし。されど明日はむづかしき日にて候ふ。税關の調べ二度、手形の改め三度あるべし。さらば、平かに憩はせ給へとて、車主は手を帽庇《ばうひ》に加へ、輕く頷きて去りぬ。
誘はれたる部屋は海に向へり。折しも風輕く起りて、窓の下には長き形したる波の寄ては又返すを見る。こゝの景色はカムパニア[#「カムパニア」に二重傍線]の景色とは全く殊なるに、いかなれば吾胸中には、少時の住家の事、ドメニカ[#「ドメニカ」に傍線]の媼《おうな》の事など浮び出でけん。世の中は廣けれど、眞ごゝろより我上を氣遣ひ呉るゝ人、彼媼の如きはあらじ。近きところに住みながら、屡※[#二の字点、1−2−22]往きて訪ふことだになかりしは、我と我身の怪まるゝばかりなり。彼フランチエスカ[#「フランチエスカ」に傍線]の君の如きは、我を愛し給はざるにあらねど、凡そ恩をきるものと恩をきするものとの間には、未だ報恩の志を果さゞる限は、大なる溝渠ありて、縱《たと》ひ優しき情《なさけ》の蔓草の生ひまつはりて、これを掩《おほ》ふことあらんも、能く全くこれを填《うづ》むることなし。漸くにして、ベルナルドオ[#「ベルナルド
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