エりしなり。嗚呼、われは奈何《いかに》してアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]を忘るゝことを得べきぞ。
 われは羅馬《ロオマ》の七寺を巡りて、行者《ぎやうじや》と偕《とも》に歌ひぬ。吾情は眞にして且深かりき。然るをこれに出で逢ひたるベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]は、刻薄なる語氣もて我に耳語していふやう。コルソオ[#「コルソオ」に二重傍線]の大道にて戲謔能く人の頤《おとがひ》を解きしは誰ぞ。アヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]が家にて即興の詩を誦《そら》んじ座客を驚《おどろか》しゝは誰ぞ。今は目に懺悔の色を帶び頬に死灰の痕を印して、殊勝なる行者と伍をなせり。汝はいかなる役をも辭せざる名優なるよ。此の如きは我が遂にアントニオ[#「アントニオ」に傍線]に及ばざるところぞといひぬ。吾友の言ふところは實録なりき。されど當時我を傷《やぶ》ること此實録より甚しきはあらざりしなり。
 精進《せじみ》の最後週は來ぬ。外國人は多く羅馬に歸り集《つど》ひぬ。ポヽロ[#「ポヽロ」に二重傍線]門よりもジヨワンニ[#「ジヨワンニ」に二重傍線]門よりも、馬車相驅逐して進み入りぬ。水曜日午後にはワチ
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