Jアノ[#「ワチカアノ」に二重傍線]のシクスツス[#「シクスツス」に傍線]堂にて「ミゼレエレ」(ミゼレエレ、メイ、ドミネ、憐を我に垂れよ、主よの句に取りたるにて、第五十頌の名なり)の樂あり。われは樂を聽きて悶を遣らんがために往きぬ。聽衆は堂の内外に押し掛け居たり。前なる椅榻《こしかけ》には貴婦人肩を連ねたり。色絹、天鵝絨《びろうど》もて飾れる觀棚《さじき》の彫欄の背後《うしろ》には、外國の王者並び坐せり。法皇の護衞なる瑞西《スイス》隊は正裝して、その士官は※[#「(矛+攵)/金」、第3水準1−93−30]《かぶと》に唐頭《からのかしら》を※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]《はさ》めり。この裝束は今若き貴婦人に會釋せるベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]には殊に好く似合ひたり。
 われ裏面より埒《らち》に近き處に席を占めしに、こゝは歌者の席なる斗出《としゆつ》せる棚に遠からざりき。背後には許多《あまた》の英吉利《イギリス》人あり。この人々は謝肉祭《カルナワレ》の頃|假粧《けはひ》して街頭を彷徨《さまよ》ひたりしが、こゝにさへ假粧して集ひしこそ可笑
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