]は行きぬ。ヂド[#「ヂド」に傍線]は色を喪《うしな》ひて凝立すること少《しば》らくなりき。その状《さま》ニオベ[#「ニオベ」に傍線](子を射殺されて石に化した女神)の如し。俄《にはか》にして渾身の血は湧き立てり。これ最早ヂド[#「ヂド」に傍線]ならず、戀人なるヂド[#「ヂド」に傍線]、棄婦《きふ》なるヂド[#「ヂド」に傍線]ならず。彼は生《いき》ながら怨靈《をんりやう》となれり。その美しき面は毒を吐けり。その表情の力の大いなる、今まで共に嘆きし萬客をして忽《たちまち》又共に怒らしむ。フイレンツエ[#「フイレンツエ」に二重傍線]の博物館に、レオナルドオ・ダ・ヰンチ[#「レオナルドオ・ダ・ヰンチ」に傍線]が畫きたるメヅウザ[#「メヅウザ」に傍線](おそろしき女神)の頭あり。これを觀るもの怖るれども去ること能はず。大海の底に毒泡あり。能くアフロヂテ[#「アフロヂテ」に傍線]を作りぬ。その目の状《さま》は言ふことを須《ま》たず、その口の形さへ、能く人を殺さんとす。
エネエアス[#「エネエアス」に傍線]が舟は波を蹴て遠ざかりゆけり。ヂド[#「ヂド」に傍線]は夫の遺《わす》れたる武器を取りて
前へ
次へ
全674ページ中190ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
アンデルセン ハンス・クリスチャン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング