屏《つ》めて覗ひ居たり。ベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]はこの有樣を見るより、前なる群衆を押し退けて圈の中に躍り入り、肥えたる男の側につと寄せて、その杖を奪ひ取り、左の手にこれを指し伸べ、右の手には劍を拔きて振り翳《かざ》し、かの男を叱して云ふやう。この杖をば、汝先づ跳り超えよ。猶與《たゆた》ふことかは。超えずは、汝が頭を裂くべしといふ。群衆は唯だ呆れてベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]が面を打ち眺めたり。彼男はしばし夢見る如くなりしが、怒氣を帶びたる詞、鞘《さや》を拂ひし劍、禁軍の號衣、これ皆膽を寒からしむるに足るものなりければ、何のいらへもせず、一跳《ひとはね》して杖を超えたり。ベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]は男の跳り超ゆるを待ちて杖を擲《なげう》ち、その肩口をしかと壓へ、劍の背《せ》もて片頬を打ちていふやう。善くこそしつれ。狗にはふさはしき舉動《ふるまひ》かな。今一たびせよさらば免《ゆる》さんといふ。男は是非なく又跳り超えぬ。初め呆れ居たる群衆は、今その可笑しさにえ堪へず、一度にどつと笑ひぬ。ベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]のいはく。猶太の翁《お
前へ 次へ
全674ページ中154ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
アンデルセン ハンス・クリスチャン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング