A心こゝにあらねばか、その手にしたる桂冠を摘み碎かんとする如くなりき。僧官のうちなる一人、迺《すなは》ちこれを取りて、ベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]が前に進み給ひぬ。我友は此時|跪《ひざまづ》きたるが、もろ手に面を掩《おほ》ひて、この冠を頭に受けたり。
式畢りて後、われは友の側に歩み寄りしに、彼は明日こそと云ひもあへず、走り去りぬ。翌日になりても、彼は我を避けて、共に語らざりき。我は唯だ一人なる友を失へるやうに覺えて、憂きに堪へざりき。二日過ぎて、ベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]は我頸を擁《いだ》き、我手を把《と》りていふやう。アントニオ[#「アントニオ」に傍線]よ。今こそは我心を語らめ。桂冠の我頭に觸れたる時は、われは百千《もゝち》の棘《いばら》もて刺さるゝ如くなりき。人々の我を譽むる聲は、我を嘲るが如くなりき。この譽を受くべきは、我に非ずして汝なればなり。我は汝が目のうちなる喜の色を見き。汝知らずや。この時われは汝を憎みたり。おもふに我はこゝにありて、今迄の如く汝に交ることを得ざるべし。この故に我はこゝを去らんとす。試におもへ。明年の式あらんとき、われ又汝が羽毛
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