を見つめ居たるが、忽ち我にいふやう。汝は我にもまして横着なる男なり。善くも狂言して人を欺くことよ。床は呪水に濡らされ、身は護摩《ごま》の煙に薫《いぶ》さるゝは、これがために非ずや。我知らじとやおもふ、汝はダンテ[#「ダンテ」に傍線]を讀みたるを。
 血は我頬に上りぬ。われは爭《いか》でかさる禁を犯すべきと答へき。ベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]のいはく。汝が昨夜物語りし惡魔の事は、全く神曲の中なる惡魔ならずや。汝が空想はゆたかなれば、わが説くを厭かず聽くならん。地獄に火※[#「諂のつくり+炎」、第3水準1−87−64]の海、瘴霧《しやうむ》の沼あるは、汝が早くより知るところならん。されど地獄には又深き底まで凍りたる海あり。その中に閉ぢられたる亡者も亦少からず。その底にゆきて見れば、恩に負《そむ》きし惡人ども集りたり。「ルチフエエル」(魔王)も神に背きし報にて、胸を氷にとぢられたるが、その大いなる口をば開きたり。その口に墮ちたるは、ブルツス[#「ブルツス」に傍線]、カツシウス[#「カツシウス」に傍線]、ユダス・イスカリオツト[#「ユダス・イスカリオツト」に傍線]なり。中にもユダ
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