トちゆく亞當《アダム》が族《やから》を見き。而れども言語の未だ血肉とならざりし世にありし靈魂の王たる人々のこゝにあるを見るに※[#「二点しんにょう+台」、第3水準1−92−53]《およ》びて、我眼は千行《ちすぢ》の涙を流しつ。ホメロス[#「ホメロス」に傍線]、ソクラテエス[#「ソクラテエス」に傍線]、ブルツス[#「ブルツス」に傍線]、ヰルギリウス[#「ヰルギリウス」に傍線]、これ皆永く樂土の門に入ること能はずしてこゝに留りたるものなりき。ダンテ[#「ダンテ」に傍線]が筆は、此等の人に、地獄といふに負《そむ》かざらん限の、安さ樂しさを與へたれど、そのこゝにあるは、呵責《かしやく》ならぬ苦、希望なき恨にして、長く浮ぶ瀬なき罪人の陷いるなる、毒泡迸り、瘴烟《しやうえん》立てる、深き池沼に圍まれたる大牢獄の裡《うち》なること、よその罪人に殊ならず。われはこれを讀みて、平なること能はざりき。基督の一たび地獄に降りて、又主の傍に昇りしとき、彼は何故にこゝの谿間の人々を隨へゆかざりしか。彼は當時同じ不幸にあへるものに、同じ憐を垂れざることを得たりしか。われは讀むところの詩なるを忘れつ。沸きかへる膠《
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