閧ォ。
 われは生れかはりたる如くなりき。ダンテ[#「ダンテ」に傍線]は實にわがために、新に發見したる亞米利加なりき。我空想は未だ一たびも斯く廣大に、斯く豐饒なる天地を望みしことなかりしなり。その岩石何ぞ峨々たる。その色彩何ぞ奕々《えき/\》たる。我は作者と共に憂へ、作者と共に樂み、作者と共に當時の生活を閲《けみ》し盡したり。地獄の關に刻めりといふ銘は、全篇を讀む間、我耳に響くこと、世の末の裁判の時、鳴りわたるらん鐘の音の如くなりき。その銘に云《いは》く。
[#ここから2字下げ]
こゝすぎて  うれへの市《まち》に
  こゝすぎて  歎の淵に
こゝすぎて  浮ぶ時なき
  群に社《こそ》  人は入るらめ
あたゝかき  情はあれど
  おぎろなき  心にたづね
きはみなき  ちからによりて
  いつくしき  法《のり》をうき世に
しめさんと  この關の戸を
  神や据ゑけん
[#ここで字下げ終わり]
われは※[#「風にょう+(犬/(犬+犬))、第4水準2−92−41]風《へうふう》に捲き起さるゝ沙漠の砂の如き、常に重く又暗き空氣を見き。われは亡魂の風に向ひて叫喚するとき、秋深き木葉の如く
前へ 次へ
全674ページ中121ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
アンデルセン ハンス・クリスチャン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング