に電話をかけて呼びよせた。女は少しく自棄気味《やけぎみ》なところもあつて、泥酔して彼の誘惑に辷《すべ》りこんで来た。彼は深夜、この女を見るのに堪へられなくなつて、あづまアパートに帰つて来た。彼は情婦が外泊してゐるか何かの裏切行為があるかと、恐れながら、実は期待してゐたが、女は四号室に平穏に眠つて居り、彼を見ると寝場所を作つてくれるのであつた。――彼は張りつめて来た気持が折れると、自分に腹が立つて来て、急に女に対して怒り出した。そして、手前は、俺がサツへあげられたりなんぞしたら、安心して浮気しやがるだらう、と罵り言葉を繰りかへして撲《なぐ》るのであつた。撲りながら、自分が情けなくなつたのも事実であるが、このやうな彼の倒錯した気持は、この後もずつと続いてゐる。
最近のこと、彼はバクチ場で負けたので、情婦を抵当として、彼女に気を寄せてゐる某に金を借りたことがある。その時は、すぐ回収し得たので何の変化も二人の関係に起らなかつたわけだが、彼は徹夜のバクチから帰ると、また例の癖が出て、手前は某に好意を持つてるんだらう、さうにちがひない、さうでなければ、やつがあんなに手前を抵当に金を貸すはずがない
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