》な口癖を、私はあまり好いてゐなかつたので、返事もしずに、黙つて寝た振りを続けてゐた。
「――ははは、……腹が空いてゐるんぢやないかね、……我輩がひとつ、欠食児童救済事業を起すかね」
と、つづけて、「高等乞食」は機嫌よく云ふのであつた。彼が上機嫌なのは、きのふで「正月の用意」が出来たからであつた。
これも、嘘か本当か、かなり疑はしいが、彼は昭和のはじめまで生きてゐた有名な政党政治家の息子だと自称してゐた。その父親の死後、莫大な借財に苦しめられて、学校も中途でよさなければならなかつた彼は、すつかり荒《すさ》んで、不良少年になつたりした揚句《あげく》、ここまで落ちて来たと云ふ。昔、親父の世話になつたやつらで、時めいてゐたのも、難渋してゐる一家に報恩の手を差しのべるどころか、却つて、少しばかりの貸し金をうるさく取り立てようとしたりした。病身であつた母親は、その真唯中に死んで了ひ、唯一人の姉は今病んでゐるとのことだ。
「――我輩の女房も、やはり病身なので、別居してゐるが、……いや、二人に療養費を送金してやらねばならないので、高等乞食もなかなか骨が折れるよ」
それが政治家めいた笑ひ方であら
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