いのとも一しよになつた。朝眼がさめると、昨夜は独りで床についたのに、いつの間にか、両端を人相の兇悪な大の男に挟まれてゐることもあつた。行きずりの一夜の宿を求める男たちと、殆ど夜具もすれすれに身体を近づけあつて眠り、お互ひの身の上については何も知らずに、そのまま別れて二度と逢へない場合もあれば、長逗留してすつかり顔馴染になり、半分以上は嘘と法螺《ほら》で作りあげられた昔ばなしを聞かされる例も多い。と云ふのは、かうしたどん底に生きてゐる彼らは、きまつて、はじめからこんなところに住むやうに生れたのではないと云ひたがつてゐるからだ。良い家に成長して、かつては栄燿《ええう》贅沢をしたと云ふ記憶を、まるできのふのことみたいに鮮かに描くことが出来るのであつた。少しは、本当のもあれば、他人の話から盗んで潤色したのもある。どちらにしても、彼らは零落してこのさまに到つたのだと云ふことで、今日の惨めさを忘れたり、蔽ひ隠さうとするあまい虚栄心を多分に持ち合せてゐる。真偽に拘らず、それを聞かされてゐて、こちらから進んで合槌を打つたり、出鱈目《でたらめ》な点にも感心してみせてやりたいのと、どうにも憎々しくて、折角
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