鱗雲
牧野信一
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)私は可怪《をか》しな気がする。
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一杯|宛《づつ》傾けた。
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)掻き※[#「てへん+劣」、第3水準1−84−77]つて、
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)水平にひら/\とする。
−−
一
百足凧――これは私達の幼時には毎年見物させられた珍らしくもなかつた凧である。当時は、大なり小なり大概の家にはこの百足の姿に擬した凧が大切に保存されてゐた。私の生家にも前代から持ち伝へられたといふ三間ばかりの長さのある百足凧があつた。この大きさでは自慢にはならなかつた。小の部に属するものだつた。それだと云つても子供の慰み物ではない。子供などは手を触れることさへも許されなかつたのだ。端午の節句には三人の人手をかりて厳かな凧上げ式を挙行したものである。――因縁も伝説も迷信も、そして何として
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