間の顔のつまらなさに引き換へて、仮面などといふものゝ、絶対に誇張された表情の怪美に眼を視張つた。自分の作風は、太い線をもつて滑稽《バロク》の段階に鮮明でありたいものだ! と夜空へ向つて眼を据えた。
「大層な蛍ですな!」
こちらの顔ばかり視詰めてゐるのかとばかり私はおもつて、気拙がつてゐたところが、その時彼は舌を巻いて蛍の美観を嘆じた。
底本:「牧野信一全集第五巻」筑摩書房
2002(平成14)年7月20日初版第1刷発行
初出:「文學界」文圃堂書店
1934(昭和9)年7月1日発行
入力:宮元淳一
校正:伊藤時也
2006年8月3日作成
青空文庫作成ファイル:
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