「地上で、毎晩々々斯んな風なドンチヤン騒ぎを演じてゐたら、地の霊が好奇心を起して青い炎を噴き出しはしなからうか、といふのがこの祭りの主旨ださうだがね。」
「昨夜のページェントでは、悪魔と悪魔の格闘の場面がクライマックスだつたけれど、あれは一体何ういふ結末を吾々に予想さすための主題だつたのか知ら?」
「悪魔と悪魔でなければ、騒々しい音響が出ないではないか、悪魔同志の罵り合ひを聞かせたら、さすがの地の霊も眠りをさまたげられて怒鳴り出すであらう――といふ。然し生物のうちで、永遠に憎み合うてゐるといふのは互ひが悪魔であるといふことの証拠ださうだね。」
「あの場面にオルフェスの竪琴を伴奏につかつたところは舞台監督の奇智だつたな。」
「おお、フエス! おお、フイス! ――悪魔の格闘騒ぎで地の霊を呼び醒さうなんて、何とまあ怖しい謀みごとであらう。怖ろしい報いが来なければ好いが……俺の胸は震へて来た。あの空の無限の薄黒さにおびえずには居られない。あの空に閃めき出る光りの乱舞は、とうの昔にクリステンダムのセント・ジヨウジに退治された筈の飛竜が再び生を得て、吾等に向つて毒気を浴せかけてゐるかのやうだ。」
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