謾yや友達や肉親から享けた素養と環境に就いて、何處を何う拔摘したならば、この機の、ヘラルド・システムに最も適當すべきか、それには畢竟三十八年幾月かの生涯を最も端的に語るべきと考へるのであるが、その力量を試し損つたのは遺憾である。――ひたすら、刀ヲキ抽テ水を[#「を」はママ]斷レバ水更ニ流レ、杯ヲ擧ゲテ愁ヲ銷サントスレバ愁更ニ愁フともいふべき焦燥にさへ驅られながら、思ひ出の走馬燈は限りもない勢ひで回轉するものの私は途すがら落花に遇つて長く歎息する面持で絶望と陶醉の島を遍歴して來たに過ぎない。
皆な忘れて裸島へ泳ぎつき、私は日に日に漂流者の營みをもつて、あちこちに移り住んだが、わづかな風にさへ私の小屋は忽ち吹き飛んで未だに家も成さない。どうやら私の Indian Slide は運命的でもありさうだが、私は昨日の己れが絶對の姿であるとは考へたくないのである。
落花踏ミ盡シテ何處ヘカ行ク――
つい焦《じ》れつたくなると漢語調の歌をうたふのは、代紋《かへもん》と稱して提燈や傘などにつける紋章に梯子《はしご》の印《しるし》を付け、自烈亭居士と號して狂歌などを詠んだ祖父、そしてインデイアン・シ
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