のスロウプは滑らかな芝に覆はれてゐた。――そんな「劇的」な動作に私は到底人中では堪えられなかつたのである。
「バカヤロウ――ワガハイの靴のことも考へないで、そんなにはやくかくれては、ボクは転びさうではないか。」
彼女はほんとうに怒つたような声を挙げながら、危ふ気な脚どりで石段を降りた。ランプの光りを投げると、未だ穿き慣れない踵の高い靴が臆劫さうに段々を注意深く踏み応えてゐた。(これらの、とるに足りない印象が時経れば経る程鮮かに残つてゐた。どうやら熱海線の長い思ひ出の中の、私にとつては得難きアルペンの花であつたような気がするのである。)
もう梅も散つて、そろ/\山桜の花が開きさうな晩、私達は月あかりの芝生で土産の弁当籠をあけて家へ向ふのも忘れた。
「ミヤニニタウシロスガタ――といふのは何んな意味なの。」
宮に似たうしろ姿や春の月
と私が記念碑の文字を訓むと、彼女は即座にノートをとり出して質問などした。
「スプリング・ムーンが、別れた恋人のかたちに似てゐるといふセンチメントをうたつたエレヂイである。」
「月が恋人のかたちに似てゐるといふのが、どうしてエレヂイなの?」
彼女は神妙に首
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