て犯し得よう筈もないのである。けれど、嗚呼戯《あゝ》――と私は吐息を衝きながら、何と夥しい不孝を感じながらも、その単に飽くまでも生真面目さうに一方ばかりを睨んだまん丸い眼玉、陰影の無い武張つた大面、そして稍ともすれば頤をぐつと引いて大層らしい思案の腕組に陶然たる有様などに接するにつけ、私はその禿げあがつた頭の天辺に赤い缶型の帽子を想像せずには居られなかつた。
「先づ△△から××まで私線鉄道を敷いて、△△山の赤土を埋立地へ運ぶとなれば……」
と彼は虚空に眼を据えた。――彼への訪問者といふのが、どれもこれも、一見すると狸のやうに落着いて葉巻などを喫してゐるが、愛嬌笑ひの声も、真剣味を露はにした賛同の握手も、真面目気であればあるほど空々しく品が悪かつた。山林技師であるN《ナタリー》の父親だけが、おそらく級友でもあつたかのやうに、へだてのない容子が一見してあきらかであり、
「何ウモ君ノマハリニ集ル紳士連ハ、信用成シ難イネ。」
などゝ云つても、彼は返つて何か魂胆あり気にかぶりを振つて一向とり合はなかつた。
私たちにしろ、もう遥かの山のむかふからはトンネル工事の爆破の音なども響きはぢめたし、
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