まらない! と思つた。
 滝本は、大分後れて呑気な脚どりでぽか/\と従いて来る後ろの百合子達を振り返つて「これから、競馬場へ行つて見よう、兎も角俺に従いておいでよ。」
 と合図して、河堤を急に左に折れて丘を昇りはぢめた。
「……えゝ、さうなんです、村井は或る誘惑と戦つてゐるんです。」
「まあ! ――それにしても、一体、それは――誰を恋してゐるといふんだらう?」
 百合子と竹下は、そんな言葉を、馬首を並べて取り交しながら滝本の後を追つてゐた。ローラは八重と轡を並べて、切りに日本語に関する質問を提出してゐた。
 竹下は話を続けてゐた。
「此方は、つまり男が四人――そして、吾々のカタリーナ媛《ひめ》が三人――四人と三人……」
「馬鹿/\しいわ、四人と三人ぢや駄目ぢやないの!」
 百合子は、事更に声を挙げて馬鹿/\しさうに哄笑してゐた。竹下が伝へようとしてゐる村井の所存――四人の男達のこの頃の理想の一端は、四人と三人のこのまゝの生活を、形式を変へて都会に移しても、そのまゝ理想の共和生活が保たれなければならない筈なのだが、そして四人の騎士は、三人のカタリーナが醸し出す明朗な煙りに、誰が誰にといふ
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