ウストの科白を口真似したりして、
「体は離れても魂は離れませぬぞ、マーガレツトの口唇が――」
といふところを、わざと、このマメイドの――と云ひ換へて、
「――神体に触れても嫉ましいわい。」
などゝ戯れたりしたことがある位ひ、美しい娘です。
二
云ふまでもなく、そんなことを私が唸つたりしたとは云へ私が彼女に対して特別な関心を抱いた! とか、などといふ重苦しい話ではないことは、はつきりと断つて置きます、私はそんなことを云つてたゞ彼女の価値を吹聴したまでのことで、天晴れ私は私の妻と共々に常々彼女を私達の朗かな友達として推賞してゐるだけのことなのです。だから私達は、この時だつて、斯んなことを話合つてゐました。
「メイちやんを――此方の友達に紹介しようぢやないか。」
「屹度――此方の人達を紹介したら、メイちやんのとても好きな人が出来るわよ。あなた誰だと思ふ?」
私は妻と共に、猛烈に速く、そして凄ぢく揺れる青バスに乗つて村のモダン娘「メイちやん」を迎へるべく東京駅へ出かけました。
「まあ、奥さん、綺麗になつたわね、ちよつとの間に――」
メイ子は、私の妻の手をとつて、その顔色
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