痴酔記
牧野信一

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)鬼神《デモーネン》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「髟/(冂<はみ出た横棒二本)」、第4水準2−93−20]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)未だ/\
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 千九百三十年、クリスマスにちかき頃――。

     一

 J・K兄
「シプリア人と処女の話」の作者の名前は解らぬだらうか? そして、矢張りこの作が、吾々の悪魔を、作品のうちにとり入れた世界での最初の文芸作品であらうか? それから「シプリア人と処女の話」といふのが本来の題名なのか、それとも「アグリタスとジヤステイナ」が原名なのか、君の意見を訊きたい。アグリタスはジヤステイナを意に従へるために終に悪魔の助力を乞ふのであるが、それも無駄になり、アグリタスは悪魔との規約を破つてその洞窟を去り、全く孤独でジヤステイナを訪れるのだが、悪魔は彼の変心を怒つて、何と叫ぶのであつたかね? その罵りの言葉を
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