談にして僕に届けて寄したりしたものさ。(4)――これは森の傍らにある僕等のキヤンプだ。左手にある小屋は以前に炭焼の家族が住んでゐたのだが彼等は去年の暮更に奥深く森の中へ移ることになり、空家になつたので僕等が借りうけたものである。斧を振りあげて薪をつくつてゐるインヂアンは僕で、傍らに鉄砲を磨いてゐる山女が僕のワイフだ。牛飼のEといふ男が来ると、この男鉄砲の名人で、何時でもこのまはりで忽ち二三羽位ひの小鳥を落して仲々うまい料理をつくつて呉れる。
 写真の(5)は、村にある僕等の借屋での酒盛の光景だ。山の神様の祭り日といふ目出度い日があつて順番に仲間の者の家を宿として、飲み、歌ひ、踊る――のである。飲み――だけの仲間入りは辛うじて出来るが、新来の僕等には歌は常に聴手であり、踊りは常に見物人であることは言を俟たない。
 写真の(6)を見よ――これが山の神様の祭り日の踊りの実景だ。踊り手がこのユニフオームだから、こうして火のまはりをまはつてゐる姿は、真のインヂアンに見えるだらう。
 この踊りは相当の熟練を要するらしい。写真の一端に一人、妙なかたちで、不整ひに腕を振りあげてゐる男があるだらう。これ
前へ 次へ
全13ページ中10ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
牧野 信一 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング