したものだ。少々説明してやらう。(1)は総選挙の当日に於ける村役場の前だよ。入口の受付に陣どつてゐるインヂアンは、例の水車小屋の若者Eだよ。得意然と腕を組んで、強さうな顔をしてゐるだらう。次の(2)は当日の居酒屋の前で民政党の運動員が歓喜に踊つてゐる光景だよ。彼等は、云ふまでもなくこの服装で凡ゆる運動に従事したが、何処へ出るにも馬に依つて山を越えなければならないといふ村であつたから、今回はこれで大変に機敏な活動が出来たといふ話で、写真の(3)を御覧! 一人のインヂアンが、一団の同族に胴あげをされてゐるだらう、それは――担ぎあげられてゐるのは僕で、僕がその時不図通りかゝつたのを見ると、彼等は一勢に居酒屋の中から飛び出して来て、
「君のお蔭で全く愉快な活躍が出来たんだよ!」
「有りがたうよ。」
「感謝するよ!」
などゝ云ひ放つやいなや、まるで僕を代議士当選者でゞもあるかのやうに、有無を云はさず手どり脚どりして、三度も空中に投《はふ》りあげやがつた! それを案の条、通信社の写真班が当選者と見誤り、駆けつけてパチリとやつたのだが、後で話をきいて、無駄写しをしてしまつたのが解り、不用なもので冗
前へ
次へ
全13ページ中9ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
牧野 信一 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング