は君も知つてゐる大学生のHだよ。僕等と一処に此処までも来てゐるんだ。Hの奴、この時、あんな踊り位ひ俺だつて出来るに違ひない、キヤムプ・フアイアのまはりで俺達がやるトラバトウレと大同小異らしいぢやないか、演つて見よう! と調子に乗つて無造作に仲間入りしたのであるが、一向に調子が合はず一回りもしないうちに忽ちあかくなつて脱け出るべく余儀なくされた仕末さ。写真の様子でも解るだらう、あの息苦しくテレくさ気に切端詰つたらしい気の毒さうな姿が!
(7)の写真は、丘の芝原に寝て僕が読書してゐるところを不知の間に写されたものだ。読んでゐるのは文芸雑誌だ。インヂアンが山の上で文芸雑誌を読んでゐるなんて突拍子もない光景だが、天気の好い日は此処に斯うしてゐると、僕の経験範囲の凡ゆる室内は快に於て比ぶべきもないのだ。この通信も大方此処で斯うして書いたんだよ。冠だけは日除のために(好適)斯う、被つてゐるが上半身は全裸ではないか。――次の写真(8)は、EとHとワイフとが、午飯を担いで俺の在所を探しまはつてゐるところさ、俺が見つかり次第其場にデインナー・パアテイを開くわけさ。ワイフが口にくわへてゐるのは呼子のサイレ
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