「そいつは、例の工夫だ、サンタクロースの衣裳にならつて、カーテンを応用するなんて何んなものだい、丸木小屋気分がいよ/\濃厚となつて面白いではないか。」
「スタツキングとか、スカートとかの問題になるとお前は、仲々騎士らしいことを云ふが、情熱の眼を不図輝やかしたりしないように注意したまはれよ! Hurrah!」
 私は、一本参らせられたりしました。そんな、こんな冗談を交しながら大方の飾りつけを終つた時分になつて、フロラが、
「mistletoe がない!」
 と気づきました。

     二

 で私は早速、
「こんな森の中だもの、何処にでもあるに違ひないよ。……僕が一走り行つて探して来るのは容易だが、愉快な形式を尊重して一枝の mistletoe を、二人がゝりで索めに行くといふ古風な夢を実現して見ることにしようではないか。」
 と申し出て、フロラと手を携へて森の中へ出かけたところが、梢ばかりを見あげながら終ひには首筋のあたりが変になつてしまつた程熱心に探し回つても、一向それらしいものが見当らぬのです。
「ヤドリ木御存じ?」
 私は出遇ふ人毎に訊ねましたが、皆な同じやうにぼんやりして、知
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