秋・二日の話
牧野信一

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)他家《よそ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)教へる[#「教へる」に傍点]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ゆうべだ/\
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 綽名だけは一人前――悪党きどりの不良少年――母島村長の懇望から三十人をけふ島送り――。
 未だ十三や十四の身空でオートバイ、洋服、熊、ガタ倉、黒、トガワ、青坊主、ヤセ馬等といふ綽名を持ち、ひとかどの悪党きどりで浅草公園を中心に新公園、寺院墓地、雷門、川崎銀行裏、五重塔等に屯して、かつぱらひやすりを働く不良少年の群には、所轄署に於ても一方ならず手を焼いてゐるが、今回小笠原の母島から上京した同村長がこれ等の不良少年を名もなつかしき母島へ伴れて行つて砂糖栽培に従事させ、丁年までには真人間にして還したいといふ希望を齎したので不良少年保護所から所轄署に依頼し、所轄署では×日の午後十時を期して×警部補指揮の下に和服が総出となつて公園附近をかり立てた結果札付きの不良少年三十名を取り押へたがその中でも比較的年が若く
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