渚
牧野信一
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)小母《をば》さん
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#5字下げ]一[#「一」は中見出し]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)忙しくて/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
[#5字下げ]一[#「一」は中見出し]
「まア随分暫らくでしたね。それで何日此方へ帰つたの?」
河村の小母《をば》さんは、何の挨拶もなく庭口からのつそり[#「のつそり」に傍点]と現れた純吉を見つけて、持前の機嫌の好さで叱るやうに訊ねた。
「四五日前……」
純吉はわけもなくにやにやしながらうつかりそんな嘘を吐いた。
「だつて学校は余程前からお休みだつたんでせう?」
「えゝそりやアもう七月の初めから休みだつたんですが、一度此方へ帰つて来て――」
何かうまい口実は見つからないものかと彼が思ひ惑うてゐるうちに、好いあんばいにせつかち[#「せつかち」に傍点]な小母さんはそんな話題にこだはつてはゐず、
「ともかく此方へおあがりよ。今日はもう朝から忙しくて/\、やつ
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