※[#「てへん+毟」、第4水準2−78−12]つた。
「おい、何うだい、今のうちに皆なで一風呂浴びようぢやないか。」
 突然そんなことを云ひ出した男があつた。
「ジヨンニーさんも一緒に入れ――俺らが背中を流してやらうよ。」
「あつはゝゝゝ、ジヨンニーさんはお前と一緒でなければ、うんと云はねえか?」
 さう云つて僕の方へ顔を突き出した男の酒臭い呼吸《いき》が、僕の鼻先に触れた時、僕はいよ/\堪らなくなつて、
「馬鹿ツ!」
 と一喝すると同時に、力任せに其奴の頬つぺたをグワンと擲つた。
 ――ミツキイは、何時もの僕達の単なる酒興の戯れかとばかり思つて、相変らずのアパツシユ気どりの身構へで頬笑んでゐた。
「おや/\、怒つたのかね?」
「あたり前だ――あんまり人を馬鹿にするない。」
「面白いね。喧嘩かね?」
 むく/\と起きあがる男があつた。
「ジヨンニーは――俺の雇主のお嬢さんミツキイてんだ。それが、何うしたんだと云ふんだ。」
 僕も起き上つて叫んだ。
「よしツ!」
 と、伝が叫んだ。
「手前達こそ俺達を馬鹿にしてゐやがつたんだ。畜生奴、女と、事が決《わか》れば、もう此方のものだ。」
 男共
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