気に光るのだが、不審を抱きはぢめたらしいよ――」
 その朝、私の姿を見るがいなやミツキイは、囲炉裏の傍らで朝酒の茶碗を傾けてゐる伝を指差した。
「君達は今日は仕事は休みかね。」
 五六人の者が、厭に落着き払つて傾けてゐる茶呑茶碗は悉く酒らしいので、僕が左う訊ねると、今日は、橇道がこわれたから、朝の発荷だけを済したら、一日休むと決めて村に下らうと思ふのだから金を借して欲しいと、稍不気嫌さうな口調で申し出た。――で、僕が納得すると、一同は忽ちはしやぎ出して、先日僕達に救けられた茶屋の女が、あの時の「ジヨンニー」の甲斐/″\しい様子に、すつかり魂を奪はれてしまつて、是非ともあの「男らしい異人さん」を伴れて来て欲しい、若しこの頼みを諾かなければ、今後決してもうお前達の申し出はお断りだ――と威嚇するのである。あの女には俺達五人の者が同じ程度に激しく参つてゐて、若し、そんなことになれば俺達は生甲斐がなくなつてしまふのだ、それ故今日は是非ともジヨンニーをあの女の許へ伴れてつて呉れ――と、五人ばかりの男が、云はれて僕は人数をしらべて見ると伝をはじめ、山猫、禿鷹、モモンガア等々と、たしかに五人の男が、頭
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