を握つて、グルグルツとそれをねぢつた。長い二本の綱が、私の頭の上から先きで一本にねぢれ合つた。彼女は巻き切れなくなるまで、グルグルとまいてしまつた。それが、殆ど咄嗟の間で私は手のおろしやうもなかつたのである。
 一杯に綱がよぢれた時に彼女は、キヤツといつて飛びのいた。同時に私の体は、素晴らしい勢ひの風車になつた。私は、必死になつて綱にしがみついてゐた。
「もう、我慢が出来ない、馬鹿にしてゐる、気狂ひ扱ひにして黙つてゐてやればいゝ気になつてゐやあがる――喧嘩となれば貴様なんかには負けないぞ!」――「よしツ!」――「飛び下りて……」――「女だと思つて負けてゐてやつたんだぞ、馬鹿ア!」
 それにしてもひどい勢で私の体は回転してゐた。それだけのことを私はやつと胸のうちで叫んだ。――眼がまはつた。
 一度とけたが、勢ひがあまつて、綱は更にねぢれやうとした――私は、ハズミをねらつて蛙のやうに飛び下りたが、どうしても直ぐには立ちあがれなかつた。
 しばらく呼吸を殺した後に私は、漸くフラ/\と立ちあがつた。何かにすがりつかずには居られなかつたほど、頭と足の見さかひがつかぬほど、グラ/\と眼が廻つてゐた
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