のあひだグルグルまはつただけで直ぐにつかまへられてしまつた。
 彼女の唇は神経的にふるへてゐた。
「チヨツ/\/\――あゝ、焦れツたい。」と彼女は病的に鋭く叫んで、私の腕を抜けるほど引ツ張つた。
 そして、私にはあんな他人の心持はわからない、ヒステリックとでもいふべきか? 眼尻を釣りあげて、何としても臆病な私には刃向《はむか》ふことの出来ない例の調子で、
「どんなひどい目に合すかも知れないぞツ!」と、まつたく絹を裂くやうな声で噛みころした。――殺されるかも知れない! ほんとうに私はそんな気がした。
 彼女は、己れの五体を地面に叩きつけずにはをられない、無茶に――発作的にそんな非常識な癇癪に燃えたつてゐた。
 私は、唖然として、引かれるまゝにブランコの上に立たされた。
「何をぼんやりしてゐるんだよ。さつきからあたしは、お前が馬鹿面をして折角の運動を見物なんてしてゐるんで腹がたつて仕方がなかつたんだ、何んにもなりあしない! あゝ、気持が悪い。」――「あたしのやつた通りな大振りをしなければ、どうしても我慢が出来ないぞ。……突き飛ばすぞ!」
 それでも私が、ぼんやりしてゐると、彼女はいきなり綱
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