、つまらないことが好きなの、あんたには解らないだらう。」
「解らない。」
「何か、思ひツきりつまらないことはないかしら? そんなことをあたしは考へてゐることもあるのよ、さうして終ひには焦れつたくなつてしまふのさ。」
「何だか、ちつとも解らないな!」
「お客ツて、あたし嫌ひさ。煩さくつて!」
「こんな田舎は、寂しくはないの?」
「寂しいよ。」
「学校にもどこにも行かないの――」
「うん――。行かないの――」
「なぜ?」
「なぜだか……」
「行きたくはないの?」
「だつて知らないもの――」
「近所にも友達はないの?」
「ないわ。」
「なぜ?」
「なぜつてわけはないぢやないのさ! あんたは馬鹿ね……チヨッ! あゝ、もう煩い/\/\。」
 突然、娘は、眼を閉ぢて激しく首を振つた。――「……さうだ。もうブランコに乗る時間だ。」
 さよなら――といふ風に彼女は、きつぱりと立ちあがつた。話が前後してしまつた。ブランコの騒動はこの後に続くべきはずだつた。

          *

 私たちは、大抵その家に一晩泊るのが例だつた。
 その晩は、私はどんな風に送つたかまるで覚えがない。娘と仲直りをしたかど
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