寄生木と縄梯子
牧野信一

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)山頭《やまがしら》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)それ[#「それ」に傍点]は歌はう。

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)早くお出で/\!
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「ヤドリ木――知つてゐますか?」
「……知らんのう、実物を見たら、あゝ、これか――と思ふかも知んないが……ヤドリ木? 聞いたこともない。」
 誰に訊ねても同じ返答ばかりであつた。私は、小屋を出てから同じ質問を若い木挽にも訊いた。山頭《やまがしら》の炭焼の老人にも訊いた。鈴を鳴して橇道を滑走して来る橇の一隊をさへぎつて、皆なに訊いたが、一様に首をかしげて顔を見合せてゐるだけだつた。
「有りがたう――兎も角僕はそれを是非とも探して来なければならないので、暫くの間休ませて貰ひますよ。タイピストと二人――」
「現場のあたりへ行つて見なされよ。」
 行列は気の毒さうに斯う云つて、鈴を鳴して降つて行つた。
「屹度見つけるであらう、僕は――」
 私は、アメリカ語で、フロラを顧みて橇道から森の中へ入
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