ようになり、ギリシヤ語で詩が書けるようにもなれるでせうよ、偉いなあ!」
「この分で行くと僕の言葉は、そのうちに日常会話までが古代のギリシヤ語になつてしまふかも知れない……」
「どうして、それが悲しいの?」
「そんな死文字の数が増してゐる間は……それに反比例して僕の……」
「迷信だわ、そんなこと――。憶へて、それが悪いといふ筈がないわ。それで博士にでもなれゝば、こんな嬉しいことはないわ、あたし……。それはさうと、雲の上――といふのは何でしたかね?」
「…………」
「教へて下さいよ。――仁王門が見へる、甚太郎の立看板も、あんなに白く、はつきりと見へるでせう――」
「どれ/\、僕にはさつぱり解らない?」
「真ツ直ぐ――向ふ……に……」
「あれがオリムパスのお宮の門かね?」
「さうよ。雲の上を踏んで、間もなく到着するところだわ。彼処まで行くと、あなた方を蘇らすに充分なネクタア(御神酒)がある……か、ハツハツハ! さあ/\、元気を出して、急げ/\――だ。ね、何うしても思ひ出せない、パアパア――何でしたかね? 雲の上――?」
「煩せえな――。パアパアネフエラスだよ。」
私は慌てゝテレ臭くはき出す
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