とも斯う極度に逢すると一種の快感だぜ。……最後に到達するところがないと如何してもあれは結べない、空想の上でも自殺は厭だし、泣き笑ひになるんぢや何だか古くさいし、それに俺の心にぴつたりしない……かと云つて、絶望状態や痴呆、放心、そこへ行き着くのは吾ながら残念なのだ……あゝ、やつぱり行くかな。」
Aは、たゞ眠気醒しのためにあらゆる努力をしながら、眠気に向つて叱咤の声を浴せてゐるのです、たゞ力を込めて休まずに喋舌つてさへゐれば何んな文句でも関はないのです、だからAはそんな出たら目な独白でもが止絶れると、徒らにオーオーなどと、動物のやうなうめき声をあげたり、拳固を堅めて己れの頭を思ひきり強く擲つたりしてゐます。そんなに酷い徹夜をして、その儘起きてしまふのではそれ位ひに過激な動作をせずには居られないのだらうと私は、自分には覚えのないことだが深く同情してゐました。
「取りつき場がない/\! 放縦に祟られたんだ、何しろ俺は何んな場合にも結果を予想しないんだからな。馬鹿ア!」などとAは、号令したやうに叫びます。耳を貸したつて仕様がないし、たわ言に意味があるわけでもないし、だから私は、AはAでそんなこ
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