らうにも指も立たぬので、私は両掌で鷲掴みにして、躍気となつて、えいえいと※[#「てへん+宛」、第3水準1−84−80]ぎとらうと努めたが、見る間に私の腕はあべこべの逆拗りを喰つて二の腕の関節が脱臼しさうになつてしまつた。いつか、これに熊蜂がとまつたから、これはと思つてそつと見物してゐたところ蜂の槍が折れてしまつて、蜂は這々の態で飛び去つたことがある――といふ挿話を雪太郎は附け加へたりした。
それから最後に私は、大きな身構えを執り先づ自分の腕を、いざ仕事にとりかゝらうとする力技者のやうに鳴らした後に、やをらと振りかぶつて雪五郎の力瘤に飛びかゝつて見ると、実にもこれは真実の石であつたから、慌てゝ腕を引つ込ませてしまつた。
「そんなら、いつそ私のに喰ひついて御覧なされ……」
たぢろいだまゝ木兎の眼つきをしてぎよろりとしてゐる私を見て、物足りなさの不興に駆られてゐるのかと察した雪二郎が、もう一遍左様云つて林檎の肩先を突き出したが、それはさすがに薄気味悪かつたので私は、もう解つた! と平に辞退して、肩をいれさせた。
これらの稀有なる腕力、強肩に比例して彼等三人は見るも壮んな均整の麗はしいス
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