ナも自己自身を限定する我々は、無限なる欲求でなければならない、生への意志でなければならない。而《しか》して世界は我々を生むと共に我々を殺すものでなければならない。世界は無限なる圧力を以て我々に臨み来るものである、何処までも我々に迫り来るものである。我々はこれと戦うことによって生きるのである。抽象的な知的自己に対しては単に与えられたものという如きものが考えられるであろう。しかし個物的自己としての我々に与えられるものは、生死の課題として与えられるものでなければならない。世界とは我々に向って生死を問うものでなければならない。個物的自己に対して与えられる世界は、一般的な世界ではなく、唯一的な世界でなければならない。我々が個物的なればなるほど、爾《しか》いうことができる。そしてそれはまた逆に矛盾的自己同一的に世界が唯一的なればなるほど、個物は個物的となるということができる。この故に個物は絶対矛盾的自己同一、即ち絶対に対することによって、個物であるということができる。自己自身の生死を媒介とする所に、個物が個物であるということができる。而してそれが行為的直観を媒介とするということである。生物の種とい
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