盾的自己同一として、自己矛盾によって自己自身から動き行く世界は、いつも現在において自己矛盾的である、現在が矛盾の場所である。抽象論理の立場からは、矛盾するものが結合するとはいわれないであろう、結合することができないから矛盾するというのである。しかし何処かで相触れなければ矛盾ということもあり得ない。対立が即|綜合《そうごう》である。そこに弁証法的論理があるのである。矛盾の尖端《せんたん》としては、時の瞬間の如きものが考えられるであろう。しかし瞬間が時の外にあると考えられる如く、それも対立を否定すると共に対立せしめる弁証法的空間の一点と考うべきであろう。時というものを抽象概念的に考えれば、過去から未来へと無限に動き行く単なる直線的進行と考えられるであろう。しかし歴史的世界において現実的に時と考えられるものはその生産様式というべきものであろう。作られたものから作るものへということでなければならない。それが過去から未来へということである。時の現在の有つ形というのがその生産様式の形である。
歴史的世界の生産様式が非生産的として、同じ生産が繰返されると考えられる時、それが普通に考えられる如き直線
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