に逢って其の美しい顔を見ると、其の様な疑いは自分で掻き消す迄も無く独りで消えて仕舞った、決して悪事をする様な顔ではない。
此ののち秀子は毎日又――一日置きほどに此の家へ来た、多くは虎井夫人が附いて居る、偶には一人の時も有る、叔父とは既に養父養女の約束が出来て居るから親密なは当り前だが、余とも仲々親密に成った、彼の虎殺しの一条から余は秀子を命の親と思い、イヤ余の方は何うでも好い、虎殺しがなくとも何がなくとも秀子を命の親と思う、秀子が顔を見せて呉れねば余の命は長く続かぬ、秀子も自ら余の為に助かった様に思う、殊に余が一身の危険をも構わずに虎の背後に飛び降りた心意気を深く喜び、此の後とても余にさえ縋って居れば何の様な敵をも防いで呉れると思って居るらしい、余は実に有難くて耐えられぬ、勿論何の様な敵だとて防いで遣る、遣るは遣るが余も其の防いで遣る可き権利の有る身分に早く成り度い、敵に向って「何故己の妻でも何でもない女を窘《いじ》めるか」では移りが悪い、保護するには何うしても我が物と云う動かぬ証拠を踏まえてからでなくば肝腎の所で足許がグラついて力が抜ける、尤も此の権利を得るのを今では爾まで六つかし
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