は此の通り出来上らずに仕舞ったと云う事だ。
併し叔父が此の塔を買おうと云うのは元々咒文や図※[#「※」は「たけかんむりの下にかねへんの碌」、読みは「ろく」、32−下14]の為ではない。噂に伝わる宝とても初めから叔父の眼中にはないので有る、図※[#「※」は「たけかんむりの下にかねへんの碌」、読みは「ろく」、32−下16]が充分に分らぬからとて何も失望する事はない、けれど兎に角此の図※[#「※」は「たけかんむりの下にかねへんの碌」、読みは「ろく」、32−下17]は聖書と共に丸部家の血筋へ伝え来たった者で、今では叔父が其の最も近い血筋だから之を預って保管して置くと云う事に成った、之にはお浦も故障を入れる事は出来ぬ、併しお浦の拾い上げた銅製の鍵だけはお浦が何うしても放さぬ「他日必ず役に立ててお目に掛けます」と余に向って断言した。ハテな、何の様な役に立てる積りなのか。
塔の検査は之だけで終り、吾々三人直ちに倫敦へ帰ったが、翌々日は早や買い受けの約条も終り、何の故障もなしに幽霊塔は本来の持主丸部家の血筋へ復った、是からは修繕に取り掛る可きで有るが、叔父は修繕の設計に付いては是非とも松谷秀子の意
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