事を叔父に告げ、美人が此の聖書を持って来たらしいなどと知らせる事は出来ぬから、唯無言で聞いて居ると、智慧逞しいお浦は其の辺の事情を察したのか「爾です叔父さんの御推量の通りでしょう」と云い更に余にのみ聞える様に「是で益々アノ松谷秀子が、お紺の仲働き古山お酉だと云う事に成るでは有りませんか、何でもアノお酉が自分一人の力では行かぬから貴方をタラシ込んで相棒に引き込む為、薔薇の花も銅製の鍵も置いて行ったのです、あの女は叔父さんが此の屋敷を買う事を知り、叔父さんの家族の中に相棒がなくては了ぬと思って居ます、若し貴方を相棒にする事が出来ねば直接に叔父さんを欺し、後々此の家へ自由自在に入り込む道を開いて爾して宝を盗み取る積りです、叔父さんへ贋電報を掛けたのもあの女ですよ」
余は此の疑いには賛成せぬけれど、爾でないと云えば八かましくなる故、無言《だまっ》て聞き流したが、其の間に叔父は咒語を繰返し「何でも図※[#「※」は「たけかんむりの下にかねへんの碌」、読みは「ろく」、32−下2]という者がある筈だ図※[#「※」は「たけかんむりの下にかねへんの碌」、読みは「ろく」、32−下2]は此の本の中へ秘して有
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