、立つ事の出来ぬ、狭い低い穴である、併し之から塔の底へ行かれるに違いないから、余はホッと安心したが、雷は少しづつ鳴って居る、其の音の塔の中へ響ける様は、宛も塔の霊が余の這入ったのを怒って、唸るのかと疑われる、頓て穴を一間も歩むと、頭の支える広い所へ出て、下へ降る階段の上へ立った、余は一歩之を降り掛けて考えた、咒語には「載升載降」と有った、降る前に何処か登る所の有る可き様に思われるが、少しも登らずに直ぐに降るとは、本統の道で有るまい、若しや此の前に何方へか登る路が有りはせぬかと、今度は左右の壁を検めつつ取って返した、有るぞ有るぞ、狭い穴の右手の壁に、更に狭い穴が有って岐路《えだみち》になって居る、見れば斜に上の方へ登るのである、何でも之に違いないと其の穴へ潜り入ったが、其の狭い事は全く筒の中を抜ける様で這って行く外はない、けれど幸いに之は短く、僅かに一間半ほど行くと、又も立って歩まれる丈の広さと成った、余は暫く立って、若しや塔の底から何かの物音が聞えはせぬかと耳を澄して居たが、此の時、又も強い雷が霹靂《なりはため》いて、爾して何所から聞えるか知らぬけれど、一種の非常に鋭い叫び声が聞えた、
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