つ撞木《しゅもく》は何所に有ろう、アア戸の表に十有二個の凸《つき》出た所が有る、此の凸点が順々に鐘に当るのだ、併し此の凸点が有る以上は、之が邪魔して戸が壁へ這入る事が出来まいと思われるが、其れとも鐘の鳴る頃には壁の一部が何うか成って此の凸点が邪魔に成らずに戸が壁へ這入るか知らん、此の辺の細かい事は到底鐘の鳴る時までは分らぬ。
 最早鐘の鳴る時を待つ一方だと、気を落ち着けて蝋燭を床へ立て、爾して自分の時計を出して検めると、茲へ入って確かに一時間は経った様な気がするけれど未だ三〇分しか経って居ぬ、僅かに十時三〇分である。
 猶だ更に是ほどの時間が経たねば鐘は鳴らぬか、待ち遠しい事だと思って、待って居ると、天井の何所かから電光《いなびかり》が差し込んで、続いて一方ならぬ雷が聞こえる、此の向きでは外では定めし風も吹いて居よう、雨も降って居よう、併し鉄と石とで堅めた室だけに雨風の音は分らぬが、雷の響は非常である、余は思わず頭《こうべ》を垂れて居たところ、其のうちに今までの蝋燭が燃えて了って室は真暗な闇と為ったけど蝋燭の用意は充分だから敢て驚かぬ、悠々と次の蝋燭を取り出そうと、衣嚢の中を探って居る
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