り込めば宜いに違いないと余は唯此の様に思い詰めて居る、午後の一時を打つ時計の音はサア潜り込む合図である。
 余は嬉しやと緑盤に手を掛けた、所が緑盤は僅かに全面の十分の一にも足らぬほど開いて其のまま止まって了った、全面の直径《さしわたし》は凡そ二尺余りも有ろうか、切めて是が七八分通りも動き、隙間が一尺五寸ほどにでもなれば潜り込む事は出来るけれど、僅か十分の一即ち二寸ぐらい開いた丈では、余は手品師でないから到底潜り込む訳に行かぬ、併し日頃自慢の大力で無理にも引き開くれば開かぬ事も有るまいと、宛かも東洋の神話に在る手力雄尊《たちからおのみこと》が天の岩戸を引き開けた様な権幕で緑盤を開けに掛かった。所が緑盤は仲々堅い、余の力も全く無益である、のみならず頓て時の鐘の響が段々に消えると共に緑盤は後戻りを始め、次第に塞がって了おうとする、幾等抵抗しても其の甲斐がない、達って抵抗して居れば余の手が秀子の被物の様に挾み剪《き》られて了うばかりである、エエ残念だと泣かぬ許りに余は手を放した、緑盤は元の通りに塞がった。
 実に合点が行かぬ、何故緑盤は是だけしか開かぬで有ろう、此の前に見た時は随分潜り込む事も
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