時計室へ登って、何うして塔の底へ降る事が出来る、昔から塔の底にありと言い伝えらるる大なる秘密を探らんがため、降り行かんと企てた者が幾人と云う数知れずで、而も一人たりとも降り得た者はない、若し有れば昔に於ては此の塔を建てた此の家の先祖一人、而も其の人は出る事が出来ずに死に、今の世では秀子一人であるけれど、余は唯彼の咒語にある「鐘鳴緑揺」と云う文句が便りだ、時計の鐘の鳴る時に、緑色の丸い戸の様な盤が動き出し、其の間から「微光閃※[#「※」は、へんが「火」、つくりが「日」の下に「立」、よみは「よく」、184−上21]」と有る通り、外の明かりが差し込んで見ゆる事は曾て見届けた所である、其ののちも其の前にも秀子から能く此の咒語を研究せよと告げられたのを今まで研究も何もせずに捨て置いたのは残念であるけれど、ナニ熱心に考えて見れば分らぬ事が有る者か、何でも緑盤の動くのが出発点だ、薄明かりの差す其の穴から潜り込めば「載升[#底本では「載昇」]載降階廊迂曲」など有った通り、昇ったり降ったり、迂《めぐ》り曲った道が有るに違いない、最う何でも時計の鐘の鳴る刻限だから長く待つにも及ぶまいと、先ず自分の時
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