かも毒薬を買って提《たずさ》えて居たとすれば、益々余の想像の通り人知れずに自殺する為と云う事が事実らしく成って来る、最早此の上を聞くには及ばぬ、早く幽霊塔へ馳せ返って様子を見る一方だ、とは云え其の事は既に五時間余、六時間ほども前とすれば、或いは早や自殺をした後かも知らぬ、余は遽しく馬の手綱を受け取り、之に乗ろうとするに、小僧「是が話のお仕舞いでは有りません、私は未だ此の後を見たのです」余は又も銀貨を与えて「知って居るだけ早く云って了え」小僧「ハイ私は何うも変だと思いましたゆえ、先刻も外へ出た帰りに故々幽霊塔の方へ廻り、暫く中の様子を見て居ました所、妙な所の窓からアノ方が顔を出しました」余「何処の窓から」小僧「アノ大時計の直ぐに下に在る室の窓です」さては余の室である、或いは余の室で自殺したのでは有るまいか、余「それ切りか」小僧「ハイ一寸と顔を出して直ぐに引っ込めました、其の後で暫く見て居ましたけれど再びは出しませんでした」余「それは何時頃の事で有った」小僧「貴方が此の家へ来て後ですから、今より一時間ほど前になります」
一時間前に生きて居たとすれば今も未だ自害はせぬかも知れぬ、或いは余の
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